投稿日:2022.5.13
講師:朝野 賢司 氏
令和4年5月13日(金)、令和4年度第1回目となる環境エネルギー委員会において、一般財団法人 電力中央研究所 社会経済研究所 上席研究員 博士(地球環境学)朝野 賢司(あさの けんじ)氏を講師にお迎えし、「クリーンエネルギー戦略の概要」と題した講演会を開催、Web参加を含め計48名の出席があった。
冒頭、西崎環境エネルギー委員長から「エネルギー問題は、ロシアのウクライナ侵攻によりかなり関心が高まってきた状況にある。昨年まで、エネルギー問題と言えば、環境問題、脱炭素問題が中心であったが、現在はそれに加えてエネルギー安全保障が大きくクローズアップされている。中でも、異次元とも言える燃料価格の高騰が産業活動や国民生活に深刻な影響を与えている。中長期的なカーボンニュートラルの流れの中で、その中核となるのが、現在検討が進められている『クリーンエネルギー戦略』であり、その中でも特に、需要側の対策が強く求められることになる。本日は、電力中央研究所の朝野様から、こうした幅広い視点からエネルギー問題について解説いただけることとなっており、皆さまご期待いただきたい。」との挨拶があった。
続いて、朝野氏から、
・ カーボンニュートラル宣言と主要な計画・戦略
・ カーボンニュートラルとは何か?ロシアによるウクライナ侵略はわが国の計画・戦略にどのような影響を与えるのか?
・【需要側】なぜエンドユース機器の低炭素化・脱炭素化が重要なのか?
・【供給側】2050年までに、再エネ大量導入はどこまで可能なのか?
・「経済と環境の好循環」は実現可能なのか?
との観点からわかりやすい解説を交えながら、クリーンエネルギー戦略の概要についてご講話をいただいた。その中で、ロシアによるウクライナ侵略に関連して、
・短期的な「脱ロシア依存」が、2030年46%減や2050年脱炭素に向けたトランジションの前に位置づけられる
・当面は、【脱ロシア依存×エネルギー安定供給×脱炭素】の3つを満たす選択肢として、「エンドユース機器の低炭素化」と
「脱炭素電源の拡大」が重要
との見方を示された。また、需要側における低炭素化・脱炭素化については、
・電力供給の脱炭素化はカーボンニュートラルに向けて大きな効果があるものの、運輸部門を中心に削減が進展しない分野
も残る
・エンドユース機器の選択問題とロックイン問題の解決が重要
・電源の脱炭素化に合わせて、電気自動車を普及させることが、カーボンニュートラル社会実現に向けた有効な一つの手段
と述べられた。
講演後の質疑応答では
・国際的な協調の位置付けに関する議論
・EV普及に向けたインフラ整備の進め方に対する見解
についてご質問が寄せられるなど、今後のクリーンエネルギー戦略への関心の高さが窺える講演会となった。